第58章 好き
第三演習場の大樹の前――――――
『これが花巻一族のねぇ…』
一見ただの…と言えば語弊があるが、ただの大きな大きな楠にしか見えない。
(けどそうでもないんやもんね…人は見かけによらずと言うけど、木も同じ生き物か…)
と、大樹を眺めているととても大切なことを忘れていたことに気がついた。
『…ああ?!火影様に一族について聞くの忘れた…植物の保全についても…あーっ…また今度やなぁ…』
任務完了報告と例の抜け忍のことばかり頭にあったさきは、すっかりそのことを失念していた。
…まぁ別に急ぐことでもないし、必ず話さなければならない事でもない。
そう自己完結した。
大樹の周りをグルッとゆっくり歩いてみる。
やはり、どうみてももともと自分がいた世界にあったものと同じだ。
(そういや、ここに来てもうすぐ一年になるのか。)
『もう一年……か。』
あの日は確か、こっちの方向を向いていて、こんなふうに暗部の人達に囲まれて…
あっちを見た時に、遠くに慰霊碑が見えたんだったよね…
そしてカカシと出会って…
さきは、当時を思い出しながらキョロキョロと顔を動かす。
そして慰霊碑の方を見た時、