第14章 二人の選んだ道
仕事を終えて、こっちで借りてもらってるマンションに帰る。
ちょっと寂しい気分の日は、零くんの好きなのとか、一緒に食べた記憶のある料理を作ることが多い。
今日はセロリとベーコンの炒め物と根菜のスープだ。セロリは零くんの好物、だけど今では私の好物でもある。
静かな部屋の中、黙々と食べ進め、ほとんど食べ終わった頃、突然スマホが鳴り出した。
画面を見れば、発信元は日本の見知らぬ番号。
もしかして……!と、一気に緊張感が高まり、スマホを両手で握りしめる。
「もしもし!」
「……元気そうだな」
「うん……久しぶり」
零くんからだった。日本は今……朝か。
「風見から何も聞いてないってことは、何も変わらずってことでいいのか?」
「だね。零くんは……?」
「まあ順調だな……次に日本に帰ってくる日って決まってるか?」
「次はまだ決まってない、けど……」
「けど?」
「別に……なんでもないよ?」
「……なんでもあるだろ……どうした」
今“寂しい”とか“会いたい”なんて言ったら、零くんはどう思うか。忙しいだろう彼に、そんな事言うべきじゃないと思ってるから、つい何も無いフリをしてしまう……
「どうもしないって」
「ふーん……?じゃあ、今度の帰国決まったら風見に連絡入れておいてくれよ、久しぶりに会いたい」
「えっ!?会えるの!?」
「ああ。最近割と自由に動けるようになってきたからな」
「わ、わかった!」
嬉しすぎる言葉に心が踊る。こんなに胸が高揚してるのはいつぶりだ。
「分かりやすいよな、は」
「え?」
「強がらなくていいから。僕に変な気は使わなくていい」
「……バレてる?」
「バレバレだ。少しくらい寂しがっててくれる方がちょうどいい」
「……そりゃあ、寂しいよ……でも会えなくても頑張るって決めたし……」
「……」
「ん?」
「なるべく早く終わらせる、もう少しだ。早くの花嫁姿が見たいからな……」
「れ、零くん……」
「最近そればっかり考えてる」
私だって考える事はある……実際それがあるから頑張れてる訳で……でも口に出して言われると、どうにも照れくさくて。顔がニヤけてしまう。
その後もしばらく会話は続き。三十分は喋ったか。久しぶりの長電話だった。