第12章 癒えない傷
「...!御館様...紫娜です」
包帯に覆われた姿
隙間から覗かせた肌は病気が進行しているのか
そばで支えているあまね様も
顔色が悪く感じる
「よく来ました 当主の代わりに私からお話させていただきます」
手が汗で滲む
緊張が走る
上弦の鬼が二人も一気に失われて
さらに太陽を克服した鬼 禰豆子が現れたことにより
鬼滅の時代に終止符が打たれる兆しは
前々から感じていた
「紫娜さん、あなたにもう一度お願いします」
もう一度?
「夜柱として次の戦いに出ていただきたいのです」
夜柱
私が柱?
守ると誓ったあの子さえ守れなかった私が
「私なんかに務まりません...」
「紫娜さ「確かに前お断りさせて頂いた時と心情は変わりましたが...私は約束も守れない弱い...
ただの子供だ...!」」
「守ると言った母上も紫遊佐も
約束を果たせなかった
椿を足でまといだと思う自分がいた
だから!
私なんかが柱になってしまえば
鬼殺隊の恥です」
堰を切ったように本音が溢れ出して
ずっと痛かった胸のうちが
やっと澄んで来た
空っぽなんかじゃない
確かに暖かかったものが急に居なくなると寂しい
この暖かさは煉獄さんの時もあった
そしてこの胸の寒さも
二度目だ
まっすぐあまね様の瞳を見ていたはずなのに
おかしい
視界が曇ってる
どんどん歪んでいく世界は
涙のせいだとわかった時
やっと現実を見れた気がした