第35章 【進路相談】
そんなクリスも、いよいよ他人の事ばかり気にしてもいられなくなった。そう、進路面談の日がやって来たのだ。
場所はマクゴナガル先生の執務室で、クリスはこの日、いつもよりやや緊張した面持ちで扉を叩いた。
「お入りなさい」
「失礼します」
クリスは緊張で汗をかいた手で扉を開けた。
部屋のほぼ中心にある大きなテーブルの上には色々なパンフレットが重なり、他にも羊皮紙のメモや走り書きが沢山置いてある。
それらから目を背けようとして思わず視線を教室の端にやると、質素なマクゴナガル先生の部屋に異色を放つドぎついピンクの置物があった。
クリスが反射的に顔をしかめると、それはなんと置物ではなくアンブリッジだった。
クリップボードを手にし、今にもゲコゲコ鳴きそうなアンブリッジを無視して事を進めるのは、中々難しいとクリスは思った。
「お座りなさい、グレイン。さて、これから始めるのは進路についての話し合いです。無論、現在魔法が使えないからと言って、免除されるものではありません」
やはりマクゴナガル先生、初っ端から一番の不安の種を突いてくる。しかしそれ以上に、クリスには不安がもう1つあった。
「でも先生、この前雑誌に堂々と「私はヴォルデモートの娘だ」なんて載せておいて、就職口なんてあるんですか?」
「あれですか……まあ、多少世論を騒がしましたが、載っている雑誌が雑誌ですので、人々の信憑性は5割から6割といったところかと――のど飴が必要ですか?ドローレス!?」
「えへん、えへん!いえ、結構ですマクゴナガル先生。しかし……まあ、よりにもよって自分が『例のあの人』の娘だと、何という嘘をついたことか……これには校長として懲罰を――」
「止めておいた方が良いですよ、先生。まだ死にたくないのなら」
クリスはまたもヴォルデモート譲りの赤い眼でアンブリッジを見つめると、口に端だけを持ち上げててニヤリと笑った。
するとアンブリッジは横幅のあるデカい体を一生懸命縮めた。
「お止めなさい、ミス・グレイン。――それで、貴女の進路ですが、何か希望があるのですか?調査によると、貴女の成績は優秀な方ですが、かなりムラがありますね」
「はあ……」