第29章 【変化】
それよりも、クリスはシリウスの方が気になった。シリウスはクリスマス休暇が終わりに近づくにつれ、またしても不機嫌で神経質になっていった。
一日の大半をバックビークの部屋で過ごすようになったり、皆と一緒にいても会話に参加せず黙っている事が多くなった。
そして夜になると、度々クリスの部屋を訪れ、明け方になると自分の部屋に戻っていった。
クリスはシリウスのこの行動に、疑念がないわけではなかったが、かと言って誰かに相談できるはずもなかった。
30超えた大の大人が、15の小娘の部屋に夜な夜な寝に来るなんて知れたら、シリウスにダメ人間の烙印が捺されてしまう様で躊躇われた。
そんなこんなで悶々とした日々を送っていると、気が付けば休暇最後の日を迎えていた。
この日は子供達みんなで1つの部屋に集まり、それぞれ好きな事をして休暇最後の日を満喫していた。
クリスは読みかけだった小説を読むかたわら、一昨年シリウスから貰ったラジオで音楽を聴いてくつろいでいた。と、そこにウィーズリーおばさんがやって来た。
「ハリー、スネイプ先生がお呼びよ。食堂まで下りてきてくれる?」
「は――はい?」
まさに青天の霹靂。ハリーは目を大きく見開いて、今のが聞き間違いであって欲しいと言う顔をしていた。
しかし、おばさんは優しい顔をしながら厳しい現実を再度口にした。
「ですから、スネイプ先生からお話しがあるんですって。すぐに食堂に来てね」
それだけ言うと、ウィーズリーおばさんは忙しそうに部屋を出て行った。ハリーはロン、クリス、ハーマイオニーの顔を順番に見て、助けを乞う様な視線を送った。
ロンが声を出さず「僕にはどうしようも出来ない」と言いたげに首を横に振った。
クリスとハーマイオニーにそれに同調するように首を振ると、死んだ魚のような目をしたハリーが独り静かに部屋を出て行った。