3年滅組、それは問題児の集まるクラスでした。/ 鬼滅の刃
第3章 昼休憩
妓夫太郎くんが話を聞いてくれないのは想定内だ。でも自分の生徒が聞かないのは想定外。時透くんという無遠慮な生徒のおかげで日々精神は鍛えられているものの、それでも心が折れそうになる日はある。人間とはそういうものだ。
「そもそもさ、やめろって言われてやめるなら誰も苦労しないでしょ」なんてぼんやりした顔で核心を突き刺してくる時透くんが容易に想像出来ては苦笑した。
「………先生」
そんな居ないはずの黒髪の少年を思い浮かべていると、ひときわ静かな低音が耳に届く。
「うん?どうしたの継国くん?」
「少し……動かないでくれるか」
「?」
なんだろう?
言われた通り大人しくしていれば、継国くんの大きな手がゆっくりと近付いてくる。それがあと僅か数センチで髪に触れそうになった時、いきなり横からパシッとはね除けられた。
「おいコラあんま近づくんじゃねぇよ」
宇髄くんの手だ。端正な顔に乗る切れ長の目が継国くんを強く睨んでいる。
「………髪に塵がついていただけだ。そんなに目くじらを立てるな」
「………あっそォ。そりゃどうも」
わしゃ……
継国くんの代わりに塵を取ってそのまま頭をひと撫でしてくる掌に心臓がとくんと鳴る。
なるほど……こうやって女子は宇髄くんを好きになっちゃうんだろうな………
不意に乱される心拍数には妙な納得を覚えた。
が、事態はすぐに急変する。
「おいおい抜け駆けするんじゃねえよ。先生はみんなのもんだからなぁあ、独り占めはよくねぇよなあ」
「ハッ、余計な心配してんなァ。てめえにゃ一生回ってこねェから安心しやがれ」
「不死川おめえもなあ」
「あァ!?んだとコラ!!」
突如、不死川くんが妓夫太郎くんの胸倉目掛けて一気に手を伸ばした。急いで止めようと一歩踏み出すが、それよりも先に不死川くんの腕を掴んで止めた人間がいた。
「………待て不死川」
冨岡くんだ。