第6章 那田蜘蛛山にて
義勇は振り返って、花怜を抱き寄せている淳一を見て驚いた。
「お前……鬼なのに隊服を着ているのか」
義勇が淡々とした声で問い掛けてきた。
「俺達は未来から来た。その際に俺だけ鬼にされた。無一郎に保護されてここまで頑張ってきたんだ。俺達は生きて、元の世界に戻るために」
淳一の言葉に、義勇は目を丸くした。
そして、頭上から誰かが急加速で舞い降りて来る。淳一を庇うように、義勇は姿勢を低くして刀を出した。
「どうして邪魔をするんです、冨岡さん」
可憐な女性の声が聞こえた。
「鬼とは仲良くできないと言っていたのに何なんでしょうか。そんなんだから、みんなに嫌われるんですよ」
そこには、胡蝶しのぶが居た。
「さぁ、冨岡さん。退いて下さいね」
しのぶは、刀を淳一の方向に向けた。
「俺は嫌われていない」
自覚ある無し関係なく、そこまで主張出来る義勇がすごい。
「いやいや、貴方は嫌われてないと思いますよ。俺達の世界では」
淳一がそう言うと、義勇がこちらに振り向いた。その目は心無しか輝いているように見える。
しのぶも彼の言葉にビックリしているようだ。
淳一は、倒れた花怜を持ち上げた。お姫様抱っこのような状態で。
「あら、俺達の世界とはどういうことでしょう?」
「ここで言うと、未来の世界だ。令和時代から来た。ここに連れて来られる際に俺だけ鬼にされたんだ。俺達は生きて、あの世界に戻りたいんだ」