第494章 真っ赤だな
20XX年東京。
その日、突如空から林檎が降ってきた。
否、林檎大の真っ赤な雪玉が降ってきたのだ。
上空数千mから降り注ぐその雪玉は、窓を割り屋根を貫き、殺戮兵器の如く街を破壊していった。
傘などもちろん役に立たず、人々は頑丈な建物や地下に避難し止むのを待つしかなかった。
「何なんだ!?あの林檎みたいな雪はっ!?」
「あんなのに当たったら…」
ほぼ全域での停電、交通網は壊滅、通信アンテナも破壊され首都機能は完全に停止してしまった。
死者負傷者多数、その被害はどのくらいになるのか想像出来ない。
この林檎雪(仮称)は首都圏にだけ三日間降り続き、街は林檎雪で埋め尽くされた。
雪といってもほぼ氷の玉と変わらず、退かすにも重機が必要となった。
学者達はこの林檎雪現象を解明するために、様々な仮説を立てたが誰も納得出来る説明には程遠かった。
空からの映像では街全体が血の海に浸かっている様だと言われ、海外のニュースでは『ブラッディトーキョー』と報じられている。
「なあ、これって美味そうだよな
食ってみるか?」
見た目は凍った林檎、砕いても中まで真っ赤だ。
「止めとけよ、何で出来てるか分からないんだぜ」
「でも、空から降ってきたんなら自然の物だろ?
大丈夫だよ…」
俺は砕いた欠片を口に放り込んだ。
「…おっ…う、美味いっ!
何か、ほんのりと甘酸っぱくて林檎みたいだ」
「マジかよ!?」
この林檎雪には糖分やクエン酸などが含まれており薄めた林檎ジュースの様な味がする。
糖分があるため、雪が溶け出すとあちこちがベタベタになり復興に更なる時間を要する事となった。
『今の人間界に林檎雪は失敗だったかのぅ…
次は春雨の雨でも降らせるか?…春だけに!』
神様のちょっとした悪戯だった。
end