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千分の一話噺

第493章 計画


『天然温泉と今が旬のふきのとうの天麩羅に…』

去年の今頃、テレビの情報バラエティーで紹介された老舗温泉旅館。
予約がなかなか取れないと言われていたが、新型コロナウイルス蔓延のこのご時世、すんなりと予約が出来た。(しかも、割安で…)
「よし、第一段階は完了だ」
俺の計画は幸先よく動き出した。

次は…。
「よう、光雄…
これからちょっと付き合ってくれ」
親友の光雄を誘う。
俺達は駅で落ち合うことにした。
「…何だよ、いきなり?」
「たまには飲みに行こうと思ってな」
駅の近くの居酒屋に寄った。
「俺の驕りだ
じゃんじゃん飲んでくれ!」
「おっ!良いのか?
よし!ガッツリ飲むぜ!」
光雄は酔っぱらうと…。
「あはははっ!
矢でも鉄砲でも持ってこいっ!」
気が大きくなり、何でも言うことを聞く。
「それじゃあ、週末に車貸してくれ」
「車?OK、OK!好きに使え!」
スマホに録画して、第二段階も完了だ。

よし、最終段階だ。

「あ、あのぅ…フミさん、ちょっと良いっすか?」
フミさんは、職場の先輩でそれなりに仲良くさせてもらっている。
「何?ユウくん?」
「しゅ、週末って何か予定あるんすか?」
いかん、ガチガチで明らかに不審だ。
「…ん?どうしたの?そんなに緊張して…」
(もう、自棄だ!)「俺と旅館に行って下さい!」
「…旅館?」
「あっ!旅行っす!
すいません…」(大事な所で…)
もう、駄目だ。

「へぇ~、どこ連れてってくれるかしら?」
フミさんは持っていたペンをクルリと回し、イタズラな笑顔を浮かべる。
「えっ?あ、あの…ふきのとうが…えっと温泉で…」
俺はしどろもどろになっていた。


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