第492章 茜空
夕暮れの放課後、少女が一人教室で机に向かって何かを書いていた。
長い黒髪をツインテールにしている後ろ姿を間違えるはずがない。
「よぅマキ、何書いてるんだ?」
そう声を掛けるとマキは振り返り…。
「えっタカシ?なんでいるのよ!?」
慌て隠そうと下敷きを被せた。
しかし…。
「へぇ~、上手いじゃん」
「きゃっ、透明だった!」
マキは更に身体を被せて描いていた絵を隠した。
俺はマキの顔を覗き込む様にして…。
「上手いんだから隠すことないだろ?」
マキにこんな才能があったんだ。
「やだっ!恥ずかしいもん!」
マキはそっぽを向く。
「そんな事言うなよ
チラッと見えたけど、犬のイラスト?」
「う、うん…」
マキはやっと身体を起こしてイラストを見せてくれた。
「あれ?これ、マキより可愛いんじゃね?」
イラストをマキの顔に並べてみた。
「やだもう、信じられない!」
マキは頬を膨らませた。
「あははっ、やっぱりマキの方が可愛いな」
夕日に負けないくらい茜色に染まった顔をしたマキを見つめた。
「バカッ見ないでっ!」
そう言ってマキはまた下敷きで顔を隠そうとした。
「だから、それは透明だって…」
end