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千分の一話噺

第491章 雪だるま


もうすぐバレンタインデー…。
彼女のいない今の俺には無縁のイベントだ。

「はぁ…身も心も寒いな…」
日本の異常気象は留まることなく、今や東京でも夏は40度、冬は零下が当たり前となっていた。

『日本の異常気象は、この先数年続くでしょう
今年は大雪に注意して…』

ニュースでも流れる様に今年は希に見る大雪で周りは一面の銀世界。
毎日、毎日、雪かきしてもすぐにまた積もる。
「異常気象もこれだけ続けば異常じゃないよな…」
そう思いながら雪かきに出る。
しっかり着込んで手袋にマフラーして…。
「そういえば、このマフラー…」
三年前に亡くなった彼女から貰ったマフラーだった。
未練がましいと言われたら返す言葉がない。

「さぁ………雪かきやろう」
とりあえず出入り口周りと駐車場周りの雪かきをする。
退けた雪をどうするか?雪国なら雪捨て場があるだろうが東京にはない。
「雪だるまでも作るか…」
今では子供でも作らない雪だるま。
仕事も休みになってるし、暇だからなんとなく作りたくなった。
「…出来た……雪だるまも寒いのかね?
………そろそろ思い出にしないとな」
雪だるまの首にマフラーを巻いた。

翌日、雪だるまをみたらマフラーがなくなっていた。
「…誰か持ってたのか?」
残念な思いと、吹っ切るきっかけだと思う事にした。



そんなことも忘れかけたバレンタインデー当日。

郵便受けに厚みのある封筒が届いていた。
宛名は俺だが送り主は書かれていない。
開けて見ると…。

『余寒見舞い』と書かれたチョコが入っていた。

チョコの裏側に…。
『ごめんなさい』と言う文字と忘れられない名前が…。


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