第487章 恒例行事
我が家の新年行事に書き初めがある。
書き初めと言っても世間一般的なものではない。
「では、これより第465回新年書き初め大会を開催します!」
村雨家、本家当主である親父が高らかに宣言をすると…。
「「「「うおぉぉぉぉ~っ!!!」」」」
集まった親戚一同が雄叫びを上げる。
書き初め大会…。
我が家…というより村雨家一族が代々続けている伝統行事で、対戦する二人の真ん中に筆を置き、先に相手の顔に墨を着ければ勝ちだ。
本家分家関係ない真剣勝負となっている。
俺は本家の長男なので、本家代表として試合に出る。
手練れの叔父さんや叔母さんを破り勝ち上がった。
決勝の相手は従兄弟の晃だ。
「和也か…、相手に取って不足はない!」
晃はやる気満々だ。
「こっちも本家の面子があるからな」
本音は面子なんかより、負けたらお年玉が没収されるんだ。
「始めっ!」
合図と共に俺はダッシュして筆を取りに行く。
晃よりスピードは俺の方が上だ。
「取った!」
「甘いぞ、和也!」
筆を取った瞬間、和也が俺の腕を蹴りあげた。
「ちっ!」
筆は宙を舞う。
俺と晃は同時にジャンプした。
がしかし、上背のある晃には空中戦では敵わない。
着地と同時に晃の背後に回る。
「俺の勝ちだっ!」
晃は空中で身体を反転させ、筆を振り下ろした。
「何っ!」
そこに俺はいない。
更に背後に回った俺は筆を叩き落とし、回転レシーブの如く筆を拾い上げ、晃の顔に振るった。
「一本!それまでっ!」
歓声の中、俺は優勝した。
「これだけ親戚がいれば、お年玉はガッポガッポだよな」
end