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千分の一話噺

第476章 時代


新型コロナのおかげで世の中だいぶ変わってしまった。
『三密』だとか『テレワーク』だとか『リモート帰省』だとか…。
『飲みニケーション』も今や『オンライン飲み会』だ。

幾つかの惣菜と缶ビールや焼酎を買い込んでモニターの前に並べる。
カメラに向かってグラスを掲げて乾杯…。

(何が良いんだ?これの…)

若い連中はそれなりに楽しそうだが、俺や加藤さんみたいな年配者には向かないな。
「そういえば、加藤さんって来年定年ですよね?」
一番若い坂井が言い出した。
「あぁ、後半年くらいだな」
加藤さんは来年5月で定年退職する。
俺がこの課で最年長って事になるのか…。
「課長、ちゃんと飲んでますか?」
苦笑いしている俺に気付いて加藤さんが声を掛ける。
「あぁ飲んでますよ
加藤さんと飲めるのも後何回ですかね?」
加藤さんと飲むとどうしても思い出す事がある。


俺が課長に昇進した時、加藤さんに誘われて二人で飲みに行った。
俺は加藤さんに嫌われるんじゃないかと思った。
「…すいません
俺なんかが課長だなんて…」
「何言ってるんだ?
お前の方が成績優秀なんだし、人を纏める力もある…
よろしく頼むよ、課長!」
そう言ってくれた。
そういえば、酒の飲み方を教えてくれたのも加藤さんだったな…。


「何二人でしみじみしてるんですか?
まだ半年もあるじゃないですか?
その頃にはワクチンも出来て、送別会もちゃんと出来る様になってますよ」
普段無口な金沢さんが気を使う。
(オンラインの方が若い奴らは話しやすいのかもな…
時代の流れか…)
「俺はこの辺で上がるから、後は好きにやってくれ」
「…では私も上がります」

老兵は去るのみ…か。


end
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