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千分の一話噺

第48章 月光


今日は学園祭の前夜祭、しかも今夜はスーパームーン…。

校庭には屋台が並び、ステージではカラオケ大会が開催されて大変賑わっている。
しかし俺がいる校舎の屋上は、そんな喧騒もBGM程度だ。


普段は閉鎖されている屋上だが、今夜はスーパームーンと言うことで学校に頼み込み、天体観測部だけに開放してもらった。
だから、ここにいるのは部長の俺と顧問の神崎先生だけ。
幽霊部員達は学園祭で盛り上がってるだろう。

日も暮れて、月が出始める。
“スーパー”と言われるが、大きさで約14%、明るさで約30%アップしてるに過ぎない。
だが、その違いは俺にはスーパー以上な違いなのだ。

「…綺麗ね」と神崎先生が呟いた。
「先生、望遠鏡で見るといつもよりクレータがよく見えるよ」
俺は夢中で望遠鏡を覗いたり、写真を撮ったりしていた。
「ユウくん、二人っきりの時は綾音って呼びなさいって言ったでしょ」
「えっ?でもここ学校の中だよ…」
俺達はお互い天体好きな事で意気投合し、周りに秘密で付き合っていた。

興奮も一息ついて、俺達は寄り添いながら月を見上げた。
「綾音、知ってる?
スーパームーンは願いを叶えてくれるらしいよ」
「知ってるわよ、そんなこと…
で、ユウくんは何をお願いするの?」
「卒業したら、綾音と結婚出来ますようにって…
綾音は?」
「わ、私は…その…」
言いかけた唇をキスで塞いだ。

スーパームーンの月明かりに包まれ、学園祭の賑わいが祝福の歓声のように聞こえた。



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