• テキストサイズ

千分の一話噺

第475章 食べ物の力


「美香ちゃん、何か顔色悪くない?」
親友の香澄に心配された。
「最近、ちゃんとした食事してないから、ちょっとビタミン不足かも知れない…」 
私は苦笑いだ。

「美香ちゃんの役、大変なんだからちゃんと食べないと倒れるよ」
「香澄だって主役だから大変じゃない?」
そう、私達は劇団に所属してる女優、今うちの劇団は新作の舞台稽古が佳境に入っている。
演目は『ピーターパン』、香澄がピーターパン役で、私は妖精ティンカーベル役だ。
役どころも重要なんだけど、今回の演出は妖精が飛び回る雰囲気を出すため、私だけローラースケートで演技しなくてはならない。

正直、運動神経が良いとは言えない。
稽古を始めた頃はコケてばかりだった。
舞台稽古が終わった後にスケートを猛練習する日々。
疲れ果てて帰って、ろくに食事を取らない事もままあった。

「…私、もう無理」
何度、音を上げただろう。
その度に…。
「この役は君にしか出来ないんだ
頑張ってくれ」
演出家が食事に誘ってくれて、遠慮なくガンガン食べた。
もちろん、無名な劇団の演出家だから高級店と言うわけにはいかないが、焼き肉食べ放題や回転寿司など質より量だ。
「頑張ります!」
お腹いっぱいになると、何故かやる気が出てくる。
「君の食べっぷりにはいつも感心するよ」
演出家はいつも苦笑いする。

そんな甲斐あって、何とかスケートも様になり舞台公演の初日を終えた。
「ふ~、何とか終わった…」
「お疲れさま、良かったわよ!
この調子で最後まで頑張ろう」
香澄に励まされたけど、最後まで出来るかしら?
「美香と香澄、ちょうど良かった
これから焼き肉行くぞ!」

何とかやり遂げられそう!


end
/ 1580ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp