第474章 インスパイア
「この花は?」
「ポインセチアよ」
「…いや、花の名前じゃなくて、何で花なの?」
「この時期に売っててクリスマスフラワーとも呼ばれているから、…かしらね」
言うと同時にスケッチブックを開いた。
彼女がこうなると会話にならない。
今日は針供養するとか言ってたはずなんだけど…。
まあ、針供養と言われても俺には何するのかもわからないが、服飾デザイナーの彼女にしてみれば針は仕事道具でもあるし重要な行事なんだろうと思った。
…が、いきなり花を買ってきて何やら新しいデザインを思い付いたようだ。
「よう、針供養するんじゃなかったのか?」
「これ、ミカンにでも刺しといて…」
何本か古い針を渡された。
「えっ、ミカン?」
「ミカンでも蒟蒻でも、柔らかい物なら何でも良いのよ、お願いね」
代わりに針供養しといてと言うことをらしい。
何枚もデザインを描き出し、一息吐いたのはもう夜だ。
「ねぇ、このポインセチアに毒があるの知ってる?」
「これに毒?そんな危ない花なのか?」
普通に売ってる花に毒とは物騒な話だ。
「毒って言っても皮膚炎程度なんだけど、子供が食べて死んだって記録もあるのよ
それに発ガン促進する作用もあるらしいわ」
「うえ~、そんな危険なのか?こいつ…
見掛けによらないな」
「綺麗な花には…ってやつよ
でも、そういう妖しさがあるから美しいのかもね」
なるほど、その妖しさにインスパイアされてデザインしてたのか。
「良いデザインは描けたの?」
「まあね…
あれ?何でミカンに針が刺さってるの?」
おいおい…。
end