第470章 ときめき
それは先週の事だった…。
いつもの様にデイセンターに出かける。
本当は、こんな所には行きたくはないのだが、仕事をする体力も気力ももうない。
我ながら歳を取ったものだと思う。
バリバリ仕事していた頃を懐かしんでいた時だ。
「波多野さんですよね?
私、今日からこちらに介護職員として入りました竹内文子といいます
宜しくお願いします」
「あっ…わ、私は波多野祐司といいます
よ、宜しく…お願いします」
突然現れた彼女は、女神の様に思えた。
妻と死に別れ早五年…、八十に手が届こうかと言うのに…、何だ?この胸のときめきは…。
「ふう、今月はこれでノルマ達成出来るかしらね?」
高齢者をターゲットにするのは気が引けるけど、ノルマ達成しないと上司からキツイお仕置きがあるから仕方ない。
入所してるお爺さん達はほとんどボケちゃってるからターゲットにはならないけど、通いで来てるお爺さん達なら何とかなりそう。
「あ…あの竹内さん
こ、これ良かったら使って下さい」
「あら、波多野さん
いつもありがとうございます」
この波多野さんはもう私の虜…。
私は淫魔サキュバス、人間男性の精気を吸い取る悪魔。
高齢だからたくさんは吸い取れないけど、たくさんのお爺さん達から少しずつ吸い取ればノルマ達成よ。
「あ、竹内さん…、良かったら今度食事でも…」
(こんなに夢中になるなんて、何十年ぶりだろう)
「まあ、嬉しい♪」
(人生の最後に良い夢見させてあげるわ)
end