第47章 戦況
「今月から冬服…
10月と言っても最近の残暑は、冬の制服だと汗ばむな」
俺達はまだ色着かない銀杏並木の下を司令部へ向かっていた。
「桧山少佐、だからと言ってだらし無い格好は下の者に示しが付きませんよ」
部下の風間中尉は生真面目で一緒にいると息が詰まるくらいだ。
「分かってるよ」
俺は苦笑いしながら制服の衿を正した。
戦況は敵進軍の勢いが衰えたとは言え、各地ではまだ劣勢が続いている。
「A国の支援はどうなってる?
それとK国との共同戦線は?」
「A国も本土に直接攻撃を受けてますから、支援要請は行っていますが期待は出来ません
K国との共同戦線は良好で攻勢に出るようです」
生真面目なだけに情報は的確だ。
2105年、R国とC国が急速に接近し軍事同盟を結ぶと、近隣各国に進軍を始めた。
日本もすぐに北海道が戦場となった。
「で、司令部は俺達をどこの戦場に飛ばすつもりだ?」
「まだはっきりとは分かりませんが、多分北海道かと…」
風間中尉の顔が曇った。
「最前線か…
生きて帰れるか分からんな
だが北海道を落とされる訳にはいかない!」
俺達は司令部の前に着くと、菊の紋が付いたドアを叩いた。
「陸軍特務隊少佐、桧山入ります!」
負けられない戦いが始まる。
end