第461章 月見
『どうだ?今夜呑まないか?』
突然送られてきたメール。
もう何年も会ってないが、高校時代からの親友からだった。
『相変わらず、唐突な奴だな
どこで呑むんだ?』
『俺んち』
その一言だけが返ってきた。
「…たっく、無愛想なとこは変わってないのか
そういえば、あいつはウイスキーが好きだったな…」
店に行ってふと思った。
「あれ?スコッチだっけ?バーボンだっけ?」
昔呑みに行った記憶を探す。
「…そうだ、ジョニ赤だ」
確かあいつがよく呑んでたやつ…。
ジョニ黒は高かいから赤で我慢とか言ってたな。
「…なんだ?黒もそんなに高くないんだ
しかも、今は黒より上があるんだな」
あいつん家に行くのも何年ぶりだろう…。
確かあいつは日本酒が好きだったはずだ。
ちょっと良い酒を買っておこうとネットで調べてみた。
「うわっ!高っ!
一升瓶で一万軽く超えるのかよ」
日本酒はほとんど呑まないから値段も知らなかったが、正にピンきりなんだと思った。
「まぁ、一番高いランクの酒はその辺の店には売ってないだろうから、店で選んだ方が早いか…」
あいつと呑むのは何年ぶりだろう…。
「よう、久しぶり」「おう、変わらねぇな」
「ほらよ、ジョニーウォーカーだ」「久保田、買っといたぜ」
お互い見合わせて笑った。
「…ところで何で急に呑もうなんて?」
「今夜は満月だからな…」
「月見は十五夜だろ?」
「今夜の月は、マイクロムーンでブルームーンなんだよ」
「なっ?マイクロでブルー?
何だよ、それ?」
「まぁ珍しい月夜って事だ」
ウイスキーはロックで、日本酒は燗酒で…。
飲み方も変わらない。
「肴は炙ったイカが良かったか?」
「俺は温めの燗じゃないからな…
肴は、そのマイクロブルームーンとやらでいいだろ?」
end