第458章 魔王物語1
ここはとある魔王城。
「フワァ~、良く寝たぁ!」
ある男がベッドから起き上がる。
部屋を出ると、そこにいた魔物が声を掛ける。
「ヒィン様!やっとお目覚めですか!」
「えっと………誰でもいいが余は何年寝ていた?」
「私をお忘れですか?執事のドロンですよ!
…ヒィン様は1800年程、お休みになっておりました」
ドロンと名乗った執事は少し拗ねたように答えた。
「ドロンか…忘れてた…ハハハッ
1800年も寝ていたのなら人間界はもう他の魔王達が支配してるんだろ?」
ドロンは首を横に振る。
「いいえ…我々魔族は別の世界に封印されてしまい人間界に手が出せなくなってしまいました」
「えぇぇぇっ!そうなの?
これからどうするんだよ!他の魔王達は?」
魔王ヒィンは頭を抱えた。
「有力な魔王様達は人間界を諦め他の世界を攻めております」
ドロンが説明する。
魔王ヒィンは考えた。
考えて、考えて、考えて…。
「…じゃあ、また寝るか」
ベッドに潜り込んだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ドロンが怒鳴った。
「別に良いだろ?もう人間界に攻め込む必要がないんだから…」
「それがあるんですよ!秘密の抜け穴が!」
ドロンがドヤ顔をする。
「抜け穴?…秘密の?」
「はい、最近分かった事なんですが、人間界のハロウィンってイベントの僅かな時間だけ魔界の扉が少し開くんです
これはまだ私しか知らない秘密です
その隙間から忍び込めば、人間界はヒィン様の物です
たくさんの魔王様達が出来なかった人間界を支配出来るのです
そうなれば、もう『最弱の魔王』なんて呼ばれる事はありません」
ヒィンは欠伸をしながら聞いている。
「フワァ~、…でそれはいつ開くんだ?」
「今宵です」
「おいおい、余は今さっき起きたばかりだぞ」
魔王ヒィンは嫌々ながら魔界の扉へ向かった。
「ヒィン様、扉に着いたら『Trick or Treat』という呪文を唱えてください」
ドロンに言い付けられた呪文をとなえる。
『鳥栗鳥取!』
扉は開かなかった。
to be continued…