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千分の一話噺

第455章 星の光


今日の夕飯は卵かけご飯。

10個200円の卵、5パック400円のパックご飯。
単純計算で1食100円の夕飯となる。

これでも贅沢な夕飯だ。
新型コロナのおかげで公演がない。
公演がなければ収入もない。
収入がないのに、支出は変わらない。

うちのサーカス団も例外ではない。
もう、貯えは全て吐き出し解散する事になるのも時間の問題だ。



「そろそろヤバそうだな…」
団員の一人が呟く。
「はぁ…他の団に行っても同じ状況だし、サーカスから離れなきゃならんな…」
あちこちから溜め息混じりの呟きが聞こえてくる。

次の朝のミーティング、長年やってきた仲間達と別れる話しになった。
「みんなも分かってると思うが、経営不振により団を維持できなくなった…
最後の公演も出来ないのが残念だが、今月いっぱいで解散する」
正直、分かっていた事とはいえ実際に解散を突き付けられるとキツい。

その日の夜、団員の一人が望遠鏡で星を見ていた。
「よく、こんな時に星なんて見てられるな?」
「星ってさ、今見えている光は何万年も昔の光なんだよね」
「は?何を…」
「今はもう、あの星は無くなってるかも知れない…

…この団は無くなるけど、これまでみんなでやってきた事をたくさんの人が見てくれた事に変わりはないんだ
あの星の光の様にたくさんの人達の思い出としてこれからも輝いて…」
涙声でなんて言ってるのか分からなくなった。

夜空を見上げると月さえ霞んで見えた。

end
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