第453章 芸術家
とある展示会。
知り合いの男性から招待状が届いていたので、友達の真美子と見に来た。
「あいつ、あんたに気があるんじゃない?」
送り主は真美子の友達で、みんなで食事したり飲み会やバーベキューとかで何度も会っている人だ。
見た目は神経質そうだけど、話すと気さくで楽しい人だったけど、それ程親しくはしてないと思う…。
「えっ?彼、芸術家でしょ?
私みたいな平凡な女に興味なんかないわよ」
真美子が言うには、一応芸術学部を卒業して前衛芸術家として活動しているらしい。
さっぱり売れてないから、バイトで生活費は稼いでるとか…。
「あんたはどうなのよ?
彼氏もいないし、ちょうど良いんじゃない?」
真美子にそう言われると、ちょっと意識してしまう。
「悪い人ではなさそうだけど、芸術家ってちょっと気難しそう…」
そこに彼が現れた。
「礼子さん、来てくれたんですね
…って、真美子も一緒かよ」
「あら?ずいぶんな言い草ね
私を怒らすとどうなるか分かってるんでしょうね?
礼子、帰ろうか?」
真美子の言葉に彼が慌てる。
「ちょ、ちょっと待った!
真美子、昼飯奢るから俺の作品を見てってくれよ」
彼は真美子に頭が上がらない様だ。
彼の案内で展示会場内を見て回る。
「で?あんたの作品ってどれよ?」
真美子が彼の作品に案内させた。
「これが俺の作品だ!」
案内された作品の題名は『メンズバレンタイン』、その前で私と真美子は呆然と立ち尽くした。
「………何これ?」
真美子がやっと言葉にした。
「これか?
メンズバレンタインデーに因んで女性の下着のオブジェだ!
礼子さん、俺と付き合って下さい!」
彼が突然、告白してきた。
私は何が起こったのか分からず、おろおろとしていた。
バシッ!!!
真美子の右ストレートが見事に彼の顎先を捉え、彼は膝から崩れ落ちる。
「礼子!帰るわよ!」
私は真美子に引っ張られてその場を離れた。
「あんなバカだと思わなかった!」
真美子はカンカンに怒っていた。
「でも、あれはちょっとやり過ぎじゃない?
彼、大丈夫かな?」
「あいつなら、あれくらい平気よ
いつもの事だし…」
真美子は手の平をヒラヒラと振って答える。
「ふ~ん、真美子の方が似合ってるんじゃない?」
「バッ、バカな事、言わないでよね!」
真美子は真っ赤になって否定したけど、満更でもなさそうだった。
end
