第452章 異世界アパート6
「はぁ…憂鬱」
週末、いつもなら直ぐに異世界の扉を開くのだが、春真っ盛りな異世界に行くのを…。
「こっち程じゃないけど、向こうでも花粉症が出るとは…」
躊躇している。
早く季節感を合わせたいのに…。
異世界、グランロールスにも季節はある。
一年は8ヶ月、1ヶ月は月の満ち欠けで決めているみたい。
満月から満月になるまで40日、一年は320日になる。
日本と違うのは、一年の始まりが冬の入り口となっている事。
冬は長くて4ヶ月あり、春1、夏2、秋1って感じらしい。
もちろん、はっきり切り替わる訳じゃなくてだいたいの感覚だ。
「う~ん、こっちの紙マスクはダメよね
向こうでマスクを自作しないと…」
とりあえず、異世界の扉を開いた。
「え~と、今日はナタリーの店が始まるまで何もないわよね」
予定を確認してからマスクを作り始めた。
こっちの材料で手縫いして、出来上がったのは昼頃だった。
「アヤコ!ランチ行かない?」
ナタリーから声が掛かった。
早速出来立てのマスクをして外に出る。
「…何それ?」
「これはマスクって言って、花粉を吸い込まない様にするの」
花粉症を説明するのってどうすれば良いの?
「何で花粉なの?」
「それは…う~と、私の国では病気の一種かな?
花粉吸うとくしゃみや鼻水が酷いのよ」
それを聞いてナタリーは…。
「アヤコ病気なの?移るの?死ぬの?」
物騒な事を言われた。
「移らないし死なないわよ!
病気って言う程でもないし大丈夫よ」
「…だったらローズに治してもらったら?」
知らない名前が出てきた。
「…ローズって?…お医者さん?」
「ローズは偉大な魔法使いよ」
遂に、遂に異世界らしいワードが出てきた。
「魔法!魔法があるの!?」
「アヤコの国には魔法はないの?」
ナタリーは不思議そうに首を傾げた。
現代医学でも治す事が出来ない花粉症は魔法の力であっさり完治してしまった。
end