第449章 出前
遅く起きた日曜日の朝、郵便受けに出前のチラシが何枚か入っていた。
いつもなら見ずに捨ててしまうが、今日は台風が近づいている事もあって出掛けずに出前を取る事にした。
「ん?なんだこりぁ?」
ド派手なピンクのチラシにメイドカフェの文字と出前の文字。
「メイドカフェが出前?」
『当店のメイド服を着た配達スタッフがお届け致します』
「話のネタにはなりそうだな」
昼飯はメイドカフェのオムライスに決めた。
電話をして2~30分くらいで玄関のベルが鳴った。
「意外と早いな…」
「お待たせしました、ご主人様!」
玄関を開けるとメイドカフェならではの挨拶が…。
「おいっ!」
「オムライスになります、ご主人様!」
「待てっ!
詐欺だろ!これは!」
「それは言い掛かりです、ご主人様!」
「ふざけんなよ!オッサン!」
メイド服を着たオッサンが首を傾げた。
「ご主人様、チラシをよく見て下さい
メイド服を着た配達スタッフとなっているでしょ?
メイドカフェの店員が配達するとは書いていないんですよ
なんの偽りもありません、ご主人様!」
チラシを確認すると確かにオッサンの言う通りだった。
しかし、納得がいかない。
「くっ…、じゃあキャンセルだ!
違法すれすれのぼったくりと同じだろ!」
「チラシをよく見て下さいね、キャンセル料は一万円ですよ…
オムライスは店で提供している物ですし、オムライス八百円と出前代五百円の千三百円はぼったくりでもないし、違法でもありませんよ、ご主人様!
…それに、こっちの身にもなって下さいよ
こんなオッサンがメイドの格好でバイク乗って配達してるんですよ、死ぬほど恥ずかしいんですから…」
「うっ………ほら、千三百円」
オッサンは代金を受けた取ると、岡持ちからオムライスを取り出した。
「また、ご利用下さい、ご主人様!」
オッサンは笑顔で帰っていった。
「あっ!写真撮れば良かったなぁ
…オッサン、台風が来てもあの格好で配達か?大変だなぁ」
ちょっとオッサンの事が心配になった。
オムライスにはケチャップでハートマークが…。
end