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千分の一話噺

第445章 秋のお彼岸


秋のお彼岸はシルバーウィークでもあり、墓参りを兼ねて実家に帰ってきた。
姉夫婦と甥っ子の史朗も来ていた。

「タタミ!タタミ!」
史朗は畳が珍しいのか、畳の上をゴロゴロと転がっている。
「史朗!やめなさい!
そろそろお墓参り行くから、これ持って」
姉はおはぎの入ったタッパを史朗に待たせた。
「ぼた餅!ぼた餅!」
史朗がはしゃぎながら駆け回る。
「これは、おはぎよ」
「え~っ!ぼた餅じゃないの?」
甥っ子は首を傾げる。
「う~ん、同じ和菓子なんだけどね…
春のお墓参りに持っていくのがぼた餅で、秋のお墓参りに持っていくのがおはぎなの…」
「ねぇ何で?ぼた餅がおはぎになるの?
何で?何で?」
甥っ子の容赦ない「何で」攻撃が炸裂する。
「ちょっとぉ…、圭介、何とか言ってよ」
姉はついに痺れを切らして俺に助けを求めた。

「はいはい…
史朗、ぼた餅の「ぼた」は春に咲く牡丹って花の事なんだ
おはぎの「はぎ」は秋に咲く萩の花の事なんだ
牡丹が咲く頃にお墓参りするから「ぼた餅」、萩の咲く頃にお墓参りするから「おはぎ」って言うようになったんだよ」
「ふ~ん、よく分かんないや」
史朗は早くおはぎが食べたいようだ。

まぁ、子供なんてこんなもんだろう。
理屈じゃなく、好きとか楽しいとか美味しいとか、単純な理由で動く。

俺はいつから理屈に縛られる様になったのか?
それが大人になったと言う事なんだろう。


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