第443章 ある展示会
絵空事。
現実には起こり得ない事の例え。
ある展示会に奇妙な絵画が出品された。
題名は『絵空事』
その大きな絵には、沢山の人が描かれていた。
一人の男がその絵に魅入られていた。
(凄い!まるでみんな生きているようだ)
そう思った瞬間、男は眩い光に目を閉じた。
「うわっ!」
男は何があったのか把握出来なかった。
「なんだ?何が起こった?
どこだ?ここは?」
男は辺りを見回した。
周りには沢山の人がいた。
だが誰も動かない。
「あの~すみませんが…」
男は声をかけたが誰一人反応しなかった。
「どうなってんだ?人形…か?
しかし表情が生々しいな…」
男は近くの人に触ってみた。
「…えっ!?…生きてる?」
体温があり息もしていた。
だが、声をかけても叩いても何も反応しない。
「まさか、これみんなそうなのか?」
ざっと見渡しても百人以上はいる。
男は気味が悪くなり、人波を掻き分けるように移動した。
そして男は気付いた。
「この人、あの絵に描いてあった人?」
特徴的な服に見覚えがあった。
その周りの人達も描かれていた事に気付く。
「ここは、あの絵の中?
嘘だろ…」
男は呆気に取られ動けなかった。
「ようこそ、絵空事へ…」
どこからともなく声が聞こえた。
「誰だ!ここは何なんだ!」
男は叫んだ。
「ここは私の絵の世界
貴方は私の作品の一部になるのです」
「ふざけるな!すぐにここから出せ!」
男は叫び続けたが、声はもう聞こえなかった。
男は次第に身体の自由を奪われる感覚に恐怖した。
「…なんで…こん…な…」
「見て、この絵!凄いわ!
まるで生きているみたいよ」
「でも、なんか不気味な絵だよな」
この二人もまた『絵空事』に魅入られた。
end