第442章 終わりの始まり
俺達がまだ付き合いだす前…。
「私ね、難病を患ってるの…」
知り合ってまだ日も浅い頃だった。
俺は良い女性と知り合ったと思い始めていた矢先だった。
「何十万人に一人なんだって…」
彼女は寂しそうに笑う。
俺は返す言葉が見付からない。
「明日は来るのかな?って思う事もあるよ」
彼女が俺を気遣っているのが分かる。
「ごめんね…
ちゃんと話しておきたかったの」
すまなそうな横顔。
俺は彼女のそんな顔は見たくない。
「ううん…ありがとう
おかげで腹が決まった…」
「えっ?」
きょとんとした彼女の顔。
「俺と正式に付き合ってくれ!」
「…私の話し聞いてたの?」
上目遣いで俺を責める様に言う。
「難病だろ?それがなんだって言うんだ?
俺は難病を患ってる文子さんと知り合って惚れたんだ!
今更、無かったことになんか出来るわけないだろ!」
俺らしくない真っ直ぐな言葉が口から出ていた。
「今の医療じゃ治らないのよ
本当に明日いなくなるかも知れないのよ!」
潤んだ瞳で訴えてくる。
「俺は頭悪いから医療の事はよく分からないけど…
今、目の前にいる文子さんを大事にしたい…
それじゃあ駄目か?」
俺は彼女を抱き締めていた。
end