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千分の一話噺

第438章 真夏の女神


今年の盆休みは、いつもの様に実家に帰ってのんびり過ごす事にした。


「ほらっ邪魔!邪魔!
ゴロゴロせんと海にでも行きな!」
帰って三日もすればお袋に邪魔扱いされ、俺は仕方なく海へ出掛けることにした。

物置からビニールシートとビーチパラソルとクーラーボックスを引っ張り出し、自転車に括り付け、途中でコンビニに寄ってから海へ向かった。
実家から自転車で2~30分も走れば小さな浜辺に着く。
地元の人間しか知らない、海の家もない、ガキの頃の遊び場だ。
「昔と変わらんなぁ」
周りは岩場で砂浜は十数メートル程度だ。
今日は波も穏やかで、海を渡る風が心地好かった。

ビニールシートを敷いてビーチパラソルを立てれば、まるでプライベートな海の家だ。
パラソルの下でクーラーボックスから缶ビールを取り出し、喉を潤す。
「くぅ~っ、一汗かいた後のビールは最高や!」
とその時、背後から声を掛けられた。

「あの~、私通りすがりの女神ですが、それ一口頂けませんか?」

振り返るとそこには純白のドレスを纏った女性が立っていた。
(び、美人や…なんでこんな美人がここに?
いや待てよ、さっきまで誰もいんかったはず…
夢?幻?もう酔ったか?まさか昼間っから幽霊?
いや、でも今、女神とか言ったよな?なんで女神?しかもなんで通りすがり?)
そんな事が頭の中を駆け巡り、呆然となってしまった。
「あの~幽霊ではなくて本当に女神なんですが?」
彼女は苦笑いしながらスカートの裾をちょっと上げて美しい足を見せた。
(なっ!?考えてる事が分かるんか?これは超能力か?
女神なら超能力があってもおかしくないか…
足も美しいし、本当の女神…!)
我に返って慌ててクーラーボックスから缶ビールを取り出した。
「ょ、よ、宜しかったらどうぞっ!」
声が半分裏返る。
「ありがとうございます」
彼女はにっこりと微笑みながら、俺の隣に座り缶ビールを受け取った。


彼女が本当に女神なのかは分からない。
だがしかし、俺は彼女の信者になってしまったようだ。


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