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千分の一話噺

第44章 30XX年の月見


月の軌道は楕円で、地球に近づく時は大きく見える為「スーパームーン」と呼ばれている。

しかし、長い年月が経てば、それが仇となる事もある。
地球に近づいた時、地球の引力に少しづつ引かれ、今やスーパームーンは地球の脅威となっていた。



「そろそろ月の影響が出始めるな…」

月が地球に近づき始めると、月が見える場所では月の引力に海面が引かれ数メートルも上昇する。
それは大陸の形が変わる程だ。

「全く毎度、毎度、めんどくせぇな」
防潮堤の管理を担当しているK氏は頭を掻きながらぼやいた。
「そう言うな…二ヶ月程度の我慢だ」

各国は海岸線に防潮堤を築き、国土が水没するのを防いでいるが、決壊した時の被害は甚大であった。

「あの忌ま忌ましい月なんてミサイルでぶっ壊せねぇのかよ?
あんなのデカイ石ころと同じだろ?無くなっても問題ないぜ」
K氏は更に愚痴る。
「大昔は“月見”と言って、月を眺めながら風情を楽しんだらしいぞ」
「風情なんて言ってられねぇだろ
そのうち、地球にぶつかるぜ」
K氏は両拳を合わせて見せた。
「それこそ遠い未来の話しだ
その頃に俺達は生きてないぜ」
「違ぇねぇ
未来の奴らは俺達より苦労するんだろうな」

二人は沈む夕日を見ながら笑い合った。
背後には巨大な月が顔を出し始めていた。



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