第434章 驕り
「遂にやって来た!
今回が最後の挑戦になる…
絶対に金を取る!」
四年毎に開催されるこの大会で金メダルを獲得する事が俺の悲願だ。
初出場は十二年前、日本代表に選ばれグループ予選で二勝すれば本選出場だった。
しかし、若かったってこともあるが浮き足だった俺は予選で涙を飲んだ。
八年前、俺は必死に自分の技を磨き国際大会でも優勝出来る実力を付けた。
グループ予選をトップで通過し意気揚々と本選に挑んだ。
本選でも順調に勝ち上がったが、準決勝で、その後の決勝戦も制して金メダルを獲得してアルベルト・ハモンドに敗北を喫した。
だが、この躍進で俺は名実共にトッププレイヤーと呼ばれる様になった。
三大会連続出場となった四年前は、グループ予選で危ない場面もあったが無事に突破。
一回戦で、金メダル候補の一角と言われたライト・ウェッジスを破った。
その勢いで挑んだ二回戦は、その大会の台風の目と呼ばれ銅メダルに輝いた無名のキム・ローガンに敗れる。
油断がなかったとは言い切れないが、完敗だった事に引退すら考えた。
一年間、無駄な時間を過ごした。
練習も手に付かず、ただ自宅高層マンションのベランダから街を眺めていた。
見下ろすと忙しく行き交う人達が蟻の様に見えた。
俺は何時からこんな風に人を見下す人間になったのか?これが驕り高ぶる事かと痛感した。
ひた向きに、がむしゃらに競技していた頃の自分を思い返し、再び心に火が着いた。
若手に混じり、血反吐を吐くくらい身体を苛めた。
国内外の試合を数々こなし自信を取り戻す事が出来た。
今大会は、四大会連続出場で金メダル候補の筆頭とまで言われ、グループ予選は難なく突破した。
初戦で今や有力選手となったキムを破り、準決勝ではアルベルトに僅差ながらリベンジを果たした。
明日の決勝の相手は前回の王者カール・シュナイダーだ。
史上初の二連覇をを目論むカールとは、国際大会で何回か対戦している。
「確かにカールは強い…
だが今の俺なら勝てない相手ではない
今までの血と汗の結晶をぶつけてやる!」
そして、運命の決勝戦が…。
end