• テキストサイズ

千分の一話噺

第431章 伝説の花火


それは去年の夏…。
夏祭りの最後を締める花火。

「大丈夫か?顔色悪いぞ」
俺はアキラの顔を覗き込んだ。
「だ、大丈夫…、こ、今年こそ決めてやる!」
震える声が結果を物語っている。

最後の大玉が花咲く時、告白すれば結ばれる。
よくある都市伝説だ。
だが、超絶人見知りで引っ込み思案なアキラは毎年この伝説に賭けている。
お膳立ては俺がやるんだが、まず相手の娘がアキラを知らない事が多い。
「俺の親友なんだけど…」
はっきり言って、アキラには悪いが無理がありすぎる。
「うぅぅぅ…、ら、来年こそは…」
「アキラ、まだやるのかよ?」
諦めの悪さも天下一品だ。


しかし、今年は新型コロナの影響で花火どころか夏祭り自体の中止が早々に決まった。
アキラはガックリと肩を落としたのは、言うまでもない。
「なぁ、アキラ…、もう花火になんか頼らないで自力で彼女作れよ」
実物のアキラは身長も高く知的なイケメンで、俺は羨ましく思っている。
しかし、本人にはその自覚がなく、ダサい眼鏡と長髪で顔を隠し、背を丸めて俯いて歩く。
これじゃあ、誰も近寄らない。
「お前、カッコ良いんだから少しは自信持てよ」
俺が何度言ってもアキラは首を縦に振らない。
「ぼ、僕はナオトみたいにカッコ良くないし、性格も暗いし…」
いつもこんな調子だから友達も俺しかいない。
「まったく…」
俺としては正反対って事が何か居心地が良いのだが…。
こいつは性格から直さないと花火の伝説どころじゃないな。

end
/ 1580ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp