第430章 報酬
たこ焼きを頬張りながら、洗濯物を洗濯機に投げ込んだ。
「はふ、はふ……美味い…
なぁ、俺が洗濯やっても大丈夫なのか?」
「何で?今日一日家事やってくれるんでしょ?」
「いや、しかし…、これ…下着だぜ」
「それがどうかしたの?」
この女は……恥じらいというものがないのか?。
彼女は超が付くくらいの売れっ子漫画家だ。
こいつくらい人気があるならアシスタントを募集すれば腐る程来るだろうに、こいつは頑として自分一人で全てを仕上げる事に拘る。
編集部からもアシスタントの話が何度も出ているが全て断ったらしい。
彼女の機嫌を損ねる事になるとまずいから強くは言えなかった様だ。
もちろん毎週締め切りに追われ、家事をしてる時間はない。
いつもは彼女の母親が来て家事全般をやってくれているが、今日は法事で来れないと言う事で俺に連絡が来た。
『たこ焼き食べさせてあげるから、一日家事やってくれない?』
こいつなりのSOSなのは分かるが、もうちょっと頼み方を知らないのか?
「ところで、このたこ焼きはどうしたんだ?」
今まで食べたどのたこ焼きより美味い。
「それ?私が作った…」
「はあ?お前、そんな事出来たのか?
…って言うか、そんな暇があるなら仕事しろっ!」
正直、びっくりしたが仕事が詰まってるのに何やってんだか?
「あっそうだ、そのたこ焼きがまだ台所にあるから、仏壇にお供えしといて…」
「こらっ!それは自分でやれ!先祖に失礼だろ」
まったく、手間の掛かる女だ。
end