第427章 罪と罰
「こっちよ、早く来て!」
ある夏の宵、朱に染まる空をバックに彼女が私を呼ぶ。
端から見れば恋人同士と思われるだろう。
が、私達の関係はいわゆる友達以上恋人未満…、そんなあやふやな関係をいつまで続けられるのか?
私はすでに彼女を求めていた。
しかし、彼女はそれに応じてくれない。
嫌われている訳ではない。
「我が儘でごめんなさい…
私は貴方に愛してもらう資格がないの…
それが、私の罪に対する罰だから…」
何を言っているのか分からなかった。
「…『罪』って何なんだ?
こうして普通に暮らしてるじゃないか…」
彼女はそれ語ろうとしない。
ただ悲しい顔をして遠くを見ていた。
私は彼女の過去を知らない。
もちろん気にならないと言ったら嘘になる。
しかし、そんな事よりも今の彼女に惚れている。
人は誰しも話したくない過去の一つや二つを持っているだろう。
が、そんな過去があるからこそ今がありその人の魅力になっている事に間違いはないと私は思っている。
だから、彼女の我が儘も受け入れてきた。
宵の空に闇が交じり始める。
「…そろそろはっきりさせないか?」
私は彼女との関係に区切りを付けるつもりだった。
「そうね…いつまでも私の我が儘に付き合わせられないわ」
彼女もいつもより真剣な顔つきだった。
「君の言う『罪』を教えてくれないか?」
「…もうすぐ分かるわ
だから、今夜は貴方と一緒に…」
彼女の方から私の腕の中に…。
数日後、彼女の『罪』が明らかになる。
私宛に彼女から手紙が…。
『もう私の寿命が尽きます。
貴方とずっと一緒にいられないのが私の罪です。
最後まで我が儘ばかり言ってますね。
私の分まで長生きしてくれれば幸いです。
ごめんなさい、ありがとう』
読みながら悔し涙を流していた。
彼女を愛した事が私の『罪』なのだろうか?
彼女を失う事が『罰』なのだろうか?
棺の中には、深紅の薔薇で彩られた純白のウェディングドレスを纏った彼女が眠っている。
end