第425章 天文部
うちの高校には天文部がある。
天文学者を何人も出している伝統ある部だ。
その天体部の週末の活動についての打ち合わせが行われた。
「プラネタリウムと天体観測、どっちが良い?」
現在の部長は、俺の親友でもある伍代慎二。
将来は天文学者になりたいと、この部に入部し部長にまでなった。
「はあ?どっちも似たようなもんだろ?」
「バカかっ!?全然違うわ!」
「そうなのか?どっちも星を見るだけじゃん?」
「まったく、仮にも天文部員なんだから少しは覚えろよ」
「何言ってんだ、部員がいないと部が潰れるから名前貸せって言ったのはお前だろ?」
「うっ、それはそうだけど…」
俺は天文なんかに興味はなく、伍代に「部の存続が掛かってるんだ」と頼まれ、仕方なく入部しただけだ。
伝統ある天文部とはいえ、部員がいなければ学校は部として認めてくれない。
最低でも三人いなくてはいけない。
伍代と俺ともう一人、俺は見たことがない富永亮と言う部員がいる。
「それより、富永って奴はいつ顔出すんだ?」
「亮なら、週末の活動に来るよ」
「そうか…で、富永ってどんな奴なんだ?」
「彼女は天才だよ…
まだ一年生だけど僕なんか遠く及ばない」
伍代が珍しく悔しがった。
「…彼女?…女なのか?
って何でお前、下の名前で読んでんだよ!」
「いや…、それは…、ほら…」
伍代のあたふたした様子でバレバレだった。
週末の活動は、雨でも平気なプラネタリウムになった。
まぁ俺が天体観測が面倒くさかったからなんだが…。
「お前が富永か?」
「…よろしく」
富永は俺をチラッ一瞥しただけだった。
これが後に天文学の申し子と言われる事になる富永との出会いだった。
end