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千分の一話噺

第424章 祭り囃子


「ここは………何処だ?」
俺は確かに船で漁をしていたはずだ。
ゴム長に革手袋、ライフジャケットも着てる。

しかし、ここは土の上…。
「船は!?みんなは!?」
漁をしてる最中、急に靄が掛かって、何かの衝撃があった。
周りを見回したが靄に覆われ何も見えない。

ドン、ドン、ドン!

どこからか太鼓の音が聞こえて来た。
俺は太鼓の音がする方に歩いて行った。

近付くにつれ、太鼓以外にも笛や鐘の音も合わさってきた。
「祭り囃子?こんな所で?」
靄が晴れると、朱色の鳥居が見えた。
鳥居の向こうには屋台が並び祭り囃子が賑やかに鳴り響いている。




「おい!直也はどこだ!
どこに落ちた!」
船長の叫び声が響く。
明け方、まだ漁をしている最中に突然、深い靄に覆われた。
直後、漁船は何かに衝突した様な衝撃を受け船員の直也が放り出されてしまった。
「靄が濃くて見えません!」
「探せ!絶対近くにいるはずだ!」
次第に靄も晴れたが、直也は発見されなかった。
「…くそっ!…何で直也がっ!」
船には損傷もあり、無線で海上保安庁に捜索の依頼をし港に戻った。

港に戻ると大勢の人が沖を眺めている。
船長は後ろを振り替えると、今まで自分達がいた海に町が浮かんで見えた。
「あれは…まさか直也は…あそこに…」
「船長?どうしたんすか?
ただの蜃気楼でしょ?」
海の男達には、この時期の蜃気楼は珍しくない。

しかし…。

「バカ野郎…あれはただの蜃気楼じゃねぇ…神隠しの町だ…
あそこに捕らわれたら二度と戻れねぇ…」
ベテランの漁師達には、伝説として語り継がれている蜃気楼の町があった。

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