第421章 水占い
私は彼の実家に行く途中、彼が御守りを買いたいからと神社に立ち寄った。
すぐ脇を小川が流れている、ゆったりとした時間が流れている様な神社だ。
しかし、そこで思いがけない出会いが…。
「あれ?高坂か?」
不意に声を掛けられた。
「えっ?…せ、先輩?」
「誰?知り合い?」
「…うん、高校の部活の先輩…」
「そうか…
じゃあ僕は御守り買ってくるから、ちょっと昔話でもしてなよ」
彼は私と先輩を残し、一人で御守りを買いに行ってしまった。
私は先輩と二人、近くのベンチに腰掛けた。
小川のせせらぎが、やけに大きく聞こえた。
「…何で先輩がここに?」
「…仕事で転勤になってね
君の方こそ?」
「私は彼の実家に挨拶に…」
「…結婚…か?」
「うん…」
「…そうか
…優しそうな彼だな」
「うん…」
「…幸せになれよ」
「…うん、ありがとう…」
先輩は立ち上がると足早に去って行った。
「あれ?先輩、もう行っちゃったのか?
さっちゃんの高校時代の話を聞きたかったのに…」
彼は何の疑いもなく惜しんだ。
私はちょっと複雑な気持ち…。
「そうだ、水占いやっていこうか?」
「水占い?何それ?」
私は聞いた事がなかった。
「水みくじっていう水に浸けると文字が出てくるおみくじだよ」
「所変わればって言うけど、面白いおみくじもあるのね」
早速、水みくじを小川から引いた池に浮かべた。
吉、恋愛運『想い人と再会』
すぐに取り出すと、彼には見せず結び処に結んだ。
end