第420章 ヒーロー?
明日は七夕。
小さい頃は短冊に願いを書いて笹に吊るした。
いつからか、そんな事もしなくなった。
願いなんて叶わない…。
大人の階段を上り始めるとすぐに気付く事だ。
もちろん、子供の頃の願いは無理難題だっただろう。
『仮面ライダーになりたい』とか『ウルトラマンになりたい』とか『ゴレンジャーになりたい』とか…。
少し大きくなっても、『億万長者になりたい』とか『大統領になりたい』とか『スーパースターになりたい』とか…。
絶対に無理と思われる願いを書いていた。
しかし、50歳になった私にその願いが叶えられた。
「今日から君は仮面レンジャーマンだ!
この変身ベルトを着けて、変身ポーズをすれば変身する
ただし、変身は3分しかもたない
胸のカラータイマーが赤く点滅したら、必殺技が出せる
敵を倒せば金が貰えて、人気が出ればテレビ番組にもなる
億万長者にもスーパースターにも大統領にだってなれるかもしれない
頑張ってくれたまえ!」
突然現れた黒ずくめの男は、呆然としている私に一方的に説明して変身ベルトを押し付けると走って行ってしまった。
「…何?
……仮面…レンジャー…マン?」
押し付けられたベルトを繁々と眺め、頭の中を整理する。
確かに子供の頃、七夕の短冊に書いた事だ。
まとめて願いを叶えてくれたのか?
まだ整理がつかないでいると、遠くからさっきの男が走って戻ってきた。
「はぁ…はぁ…
変身ポーズは…右手を突き上げて…ベルトの風車を回せばいい
風がなければ、左手で回してもOKだ
必殺技はスペシュームレンジャーキックだ
オプションだが、巨大メカもあるぞ
健闘を祈る!」
男はまた全力で走り去った。
残された私は変身ベルトを腰に巻いて、右手を突き上げていた。
end