第416章 修学旅行の思い出
良い匂いに釣られて台所に行くと…。
「おっ、タコ飯か……懐かしいなぁ」
「今日はハンゲショウだからね」
妻が聞きなれない言葉を言った。
「…ん?ハンゲショウって何だ?」
俺は首を傾げた。
妻は呆れた様に…。
「それ毎年言ってるわよ
去年はたこ焼き作ったでしょ
…まさかボケてないわよね」
と、言い放った。
「…そうだっけ?…で、なんでタコなの?」
「知らない…」
妻はあっさりと首を横に振った。
「はぁ?何だよ、それ?」
「毎年言ってるでしょ
修学旅行に行った先で、『ハンゲショウにはタコを食べる』って言ってタコ飯が出たのよ
それをお母さんに話したら、毎年ハンゲショウにはタコ料理を作ってくれたって…
だから、私はこの時期にはタコが食べたいの!」
妻は腰に手を当てて言い切る。
「修学旅行の思い出は分かったけど、ハンゲショウが何なのかが、分かんないよ」
「もう!ネットで調べたら!?」
妻は痺れを切らした。
「お前なぁ、ここで調べられる訳ないだろ
地球じゃないんだから…」
そう、ここはM78星雲。
「じゃあ、また地球に行ったら?」
「今はZが行ってるんだから、俺が行けるかよ」
若い奴の邪魔は出来ない。
「良いじゃない
タロウさんの頃はしょっちゅう行ってたじゃない」
「タロウの時は、親父が甘かったんだから仕方ないだろ…
それにもう歳だから、戦闘なんて無理だって…」
あれから50年も経ってるんだから…。
「戦わなくても、内緒で行ってくれば良いじゃない?」
「これでも管理職なんだよ…
勝手に行ったら若い奴らに示しがつかないだろ?」
本当は久しぶりに地球へ行きたいところだが、次の休みまでは我慢するしかない。
妻の里帰りを兼ねて地球へ…。
end