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千分の一話噺

第415章 家族


今年から新しく休日になった日がある。
「スポーツの日?それって体育の日じゃねぇの?」
彼が首を傾げた。
「体育の日って前回のオリンピックを記念して出来た休日でしょ?
スポーツの日は今回のオリンピックに合わせて、体育の日を改正したんだって…」
私もつい先日知ったばかり。
「何だそりぁ?最近の休日の決め方は風情もなんもねぇな」

私の彼は意外とこういう事に煩い。
風情だとか情緒だとか粋だとか…。

今年は結局、オリンピックも延期されてしまい本当になんの為の休日なのか分からなくなってしまった。
延期と言えば、今年は花火大会も行われない。
「何だよ、花火ってぇのは疫病退散って願いもあるんだぜ」
花火大会がないのは寂しいけど、このご時世だもの仕方ない。
そう考えていた時、彼が…。
「なぁ、今度俺の実家で花火しないか?
連休に姉ちゃんが子供を連れて帰って来るから花火やろうって事になったんだ」
思いがけない誘いだった。
「そ、それって…」


連休、彼と彼の実家に行った。
実家は農家で広い敷地に縁側のある昔ながらの家。
「うわ~、なんか懐かしい家ね」
「そうか?古いだけだよ」
これこそ風情じゃないの?と突っ込みたい。
長い縁側の半分は緑のカーテンが作られていた。
「黄色い朝顔?」
「あれはゴーヤよ
涼も実も取れるからね」
後ろから声を掛けられた。
「いらっしゃい
まったくこの子ったら何度言っても連れて来ないんだから…」
「あっ、お義母様ですか?
あの、わ、私…」
「そんな堅苦しい挨拶はいらないよ
話しはこのバカ息子から聞いてるから…」
なんともざっくばらんなお義母様。
「ほんと、バカな弟を持つと苦労するわ
あなたも苦労してるでしょ?」
お義姉様まで…。
「なんだよ、二人して久しぶりなのにバカ呼ばわりはないだろ?」
彼はムッとしたが、私は受け入れられた気がした。
その後もお婆様と、お義父様にお義兄様にも同じ様な挨拶をされて私は苦笑いしか出来なかった。

夕食はさながら宴会の様に賑やかで、その後の花火も大騒ぎだった。
こんな暖かい家族になれたら良いなぁと…。

end
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