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千分の一話噺

第407章 火垂袋が咲く頃


その昔、子供が蛍を花の中に閉じ込めて提灯の様にして遊んだ事から火垂袋と呼ばれる。
西洋では、神話のカンパニュールの鐘の形に似た花としてカンパニュラ(釣鐘草)と呼ばれている。
日本でも西洋でもその姿形から好印象な花だが、人間には知られていない秘密があった。

千年に一度、満月の真夜中、全ての火垂袋の花は蛍が入っているかの様にぼんやりと光りを放ち、人間には聞こえない鐘の音を奏でる。




その日は何の前触れもなく訪れる。



とある山間の村の近くに火垂袋の群生地があった。
毎年、沢山の花が咲き、SNS等で紹介され観光客も年々増えている。

そして運命の満月が登った。

満月に照らされた火垂袋を見ようと貴史と涼子は群生地に向かっていた。
「めっちゃ綺麗なんだ!」
地元の貴史は子供の頃から何度も満月の夜に見に来ていた。
「でも、夜の山ってなんか怖い…」
「大丈夫だって!俺は何度も来てるから!」
二人が群生地に着いたのは、ちょうど零時になる頃だった。
「ほら、見てみろよ…」
「綺麗…」
満月に照らされて、しかもぼんやりと中も光っている火垂袋に二人は魅せられた。

その時、夜中なのに鳥が騒ぎだし、獣の唸り声も聞こえてきた。
「何だ?…まるで山が怯えている様だ」
「貴史、怖いわ…」
二人はすぐにその場を離れた。

その夜、千年前に封印された悪魔が解き放たれた。


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