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千分の一話噺

第406章 花子さんとラムネと…


トイレの花子さんが現れた。

何故か夜になるとうちのトイレに…。
花子さんってたしか妖怪の類いだったと思うけど、別に驚かす事もなく怖さはなかった。
ただ普通に便器に座っていた。

「あの~、出ていってもらえませんか?」
「嫌!」
うちはアパート、トイレは風呂と一緒のユニットバス。
個室と言えば個室だが、そこに花子さんがいるとトイレも風呂も使えないのだ。
「勘弁して下さいよ~
風呂が使えないじゃないっすか」
トイレは近くのコンビニに行けば何とかなるが、風呂はそうはいかない。
「使えば?」
花子さんはそう言うが…。
「いや、だって風呂っすよ…裸になるんっすよ」
「だから?」
「花子さんは恥ずかしくないんっすか?」
「…別に」
花子さんはそう言うが、妖怪とは言え俺が恥ずかしい。
「どうすれば、出ていってくれますか?」
「………」
花子さんは答えてくれない。

花子さんが現れて三日が経った。
夜七時以降にしか出てこないので、それまでに風呂を使うことにした。
花子さんが出てからのトイレはコンビニに行くが、コンビニに行くとついつい無駄遣いしてしまう。
飲み物だったりスナック菓子だったり…。
「ん?復刻版ラムネ?
懐かしいなぁ」
あのビー玉を使ったボトルではないが、同じ様なデザインのペットボトルで売っていた。

飲み物は冷蔵庫に入っているが、ついつい買ってしまう。
しかも二本…。
「何で花子さんの分まで買ってんだ?」
俺は帰る途中で気付いた。
何故か花子さんが喜んでくれる様な気がして…。
「花子さん!ラムネ飲む?」
トイレのドアを開けた。

そこに花子さんはいなかった。
それ以降、現れる事もなかった。
喜んで良いはずなのに、何故か寂しさが込み上げてきた。

end
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