第41章 秋桜
秋桜…。
あの丘一面に咲く時期。
「来週の連休に見に行くか…」
『敬老の日』と『秋分の日』の間を『国民の休日』で埋めた秋の大型連休。
『ゴールデンウイーク』に対して、『シルバーウイーク』と言われている。
「シルバーねぇ…敬老の日に掛けてんだろうけど、なんかジジ臭ぇな
まぁ俺もジジィちゃジジィだから良いか…」
自嘲気味に独り言を呟き苦笑いする。
あの丘は、あの頃の俺と彼女の秘密の場所だ。
当時は森に囲まれ、ぱっと見ただけでは分からない知る人ぞ知る穴場だった。
俺達は満月の夜に森を抜け、月明かりに照らされた一面の秋桜を見るのが楽しみだった。
あれから何十年…。
昔とだいぶ変わったが、今では『コスモスの丘公園』として町興しの一つになっている。
開発で無くならなかっただけマシだ。
彼女との思い出の場所まで消えたら、俺はもう生きる気力すら無くすだろう。
(まぁお前の所へ行くのも、そう遠くない…
俺は年寄りになったが、お前は若いままなんだろうな
並んだら爺さんと孫みたいになりそうだ…)
一面の秋桜を眺めながら、あの頃に想いを馳せる。
「ここは二人だけの秘密の場所…
この先、何があってもこの景色を思い出せば大丈夫よね♪」
お前のその言葉が魔法のように思える。
end