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千分の一話噺

第405章 絆


私には双子の姉がいた。
と言っても、今はいない。
産まれてすぐに亡くなったから…。

「お姉ちゃんが生きてたら、何て言うかな?」
私は来月結婚する。
「もちろん祝福してくれるさ」
彼にも姉の事は話してある。
「…そうよね」


しかし、彼にも両親にも話していない秘密がある。
あまりにも現実離れした話だから…。


姉は私の夢に出てくる。
小さい頃は、夢の中で姉と話せることが嬉しかった。
「お姉ちゃんは何で夢の中にいるの?」
「私は死んじゃったから…」
「おじいちゃんやおばあちゃんもそこにいるの?」
祖父母は私が小さい頃に亡くなっていた。
「おじいちゃんとおばあちゃんは天国に行ったわ
私は天国に行けなかったの…」
「どうして?」
「だって、あなたは私、私はあなた…
あなたが生きている間は見守っていたい…」

初めは、これは夢の中の事で私がお姉ちゃんも勝手に考えだした事だと思っていた。
しかし、それは間違いだった。

七五三の時も小中学校入学の時や卒業の時も、高校入試の時も何かある度にお姉ちゃんは夢に出てきた。
褒めてくれたり、叱ってくれたり、アドバイスしてくれたりと本当にお姉ちゃんだった。

それが、私が十九歳になった時…。
「私は産まれてすぐに夢の中に引き込まれた
でも、あなたと同じように成長してるの…
来年で二十歳になるでしょ、生きてるあなたは成人だけど、死んでる私は昇天しないといけないの…」
「えっ?それってもうお姉ちゃんに会えないって事?
私の事を見守ってくれるって…」
「…私はもう、十分見守ったわ…
これからは私じゃなく、あなたを心から大切に想ってくれる人に巡り会えるから…必ず…」
それからお姉ちゃんは、二十歳の誕生日の前夜まで現れなかった。

「お姉ちゃん…」
姉は何も答えなかった。
ただ、ずっと優しい微笑みで見詰めてくれていた。

end
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