第400章 賭け
ゴールデンウィーク中、一歩も外に出なかったら十万円やるよ!
目の前にぶら下がった十万円に目が眩み、俺はその賭けに乗った。
俺にリスクはないし、無理なら十万円を諦めれば良いだけだ。
しかし…。
「なぁ外出て良いか?」
「あぁ良いよ
これが要らなければな」
十万円の入った封筒をちらつかせる。
「ちっ……それは…くそっ!」
食材は十分に買い込んであるし、出前を取ればマンネリにはならない。
しかし、家に居てやれる事なんて限りがある。
「…小説家ってこんな気持ちなのかな?」
「何だ、その例えは?」
「ホテルに缶詰めって言うだろ?」
「小説家は仕事だからな」
「俺だって十万円の報酬があるんだから、仕事みたいなもんだろ!」
テレビもネット動画も代わり映えのしない奴ばかりで見る気にもならない。
散歩でもして気分を変えたいところだ。
「十万円、諦めるか?」
後2日、ここまで我慢してみすみす十万円を諦める気は更々ない。
「…小説家になってやる!」
「何でそうなる?」
「暇だからさ!」
俺はすぐに小説投稿サイトを探し登録した。
早速、編集画面を開いたが、何も思い付かない。
小説なんて録に読んでもいない。
小学生の頃から、作文や感想文の類いは大の苦手。
そんな俺が小説なんて書けるのか?
「何だ?何にも書いてないじゃないか?」
「うっせぇなぁ、今考えてんだよ」
サイトの小説やテレビや動画にヒントを探した。
「これなら面白いかも…」
書き出したら、何かが取り憑いた様にスラスラ書けた。
書き上がったのは2日後。
「絶対、音を上げると思ったんだがな」
俺は十万円を手に入れたが、そんなことより俺の小説の反応の方が大事になっていた。
end