第387章 異邦人
アメリカ人の私が、何でわざわざ日本の学校に入学しなければならいの?と愚痴をこぼしたくなる。
日本の学校の印象って、みんな同じ制服着て厳しい校則に縛られた刑務所みたいなイメージしかしないのよね。
「英語ペラペラで羨ましいなぁ
苦手なんだよねぇ…」
日本で初めて出来た友達、藤原沙耶香は苦笑い。
「当たり前ね、私アメリカで暮らしてたんだから…
でも、沙耶香は日本語ペラペラね
私ちょっと苦手…」
私も苦笑いで返した。
「そうね、生まれ育った環境は仕方ないわね
私もアメリカで暮らせば身に付くのかな?」
「yes!慣れれば大丈夫ね」
入学してしばらくは堅苦しいと思ったけど、友達も出来たし、校則もそれほど厳しくはなかった。
「次は体育ね」
「私、basketball好き!」
「あのね、毎回バスケじゃないわよ」
「そうなの?」
「当たり前でしょ、アメリカじゃないのよ」
「もちろん、jokeよ」
正直、普通の授業より体育の方が言葉を使わなくて良いから気が楽なのよね。
「田中!…田中花子はいないのか!?」
「yes…あっ、はいっ!」
名前を呼ばれて我に返った。
両親は共に日本人だけど、アメリカに移住し私が生まれた。
仲良かった両親が離婚することになった。
そんなのは別に驚く事でもないけど、私はどちらかを選ぶなんて事は出来なかった。
選んだのは、祖父母の住む日本での生活。
家では両親が日本語を話してたから、日本語での生活には不便はなかった。
けど、やっぱり日本語だけの生活にはなかなか慣れないわ。
「もっと日本語に慣れないと…」
「見た目は完璧に日本人なのにね…
じゃあ今度の休み、私んち来ない?
うちの母親、国語の先生なんだ
日本語ならプロフェッショナルよ」
「oh!yes!沙耶香の家に行きたいね!」
でも友達がいれば、すぐに慣れるよね。
end