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千分の一話噺

第380章 昇進


三月は卒業式シーズン。
校門前には立て看板が掲げられている。
例年なら親子連れで登校する姿が見られるのだが、今年はちょっと様子が違う。
新型ウィルスが流行り自粛しているせいで親の参加は認められていなかった。

「卒業式か…
もう、覚えてねぇな」
「祐司って卒業出来たの?
まだ子供みたいじゃない」
「う、うるせえな
ちゃんと卒業したから就職出来たんだろ?」
高校を卒業してから十年、文子は就職した会社の後輩で三年前から付き合っている。

俺も年齢だけなら十分大人だが、果たして俺は大人になれているんだろうか?
「これでも、来月からは主任になるんだぜ
子供の訳ないだろ?」
こうは言ったものの、文子の言う様にまだまだ子供と変わらない気がする。
「えっ?主任?それ初耳なんだけど…」
(し、しまった…せっかく内緒にしておいたのに…)
「あ…その、なんだぁ…、先週内示があったばかりなんだよ」
「何か誤魔化してるでしょ?
そういうところが子供って言うのよ」
返す言葉が見つからなかった。
年下の文子の方が明らかに大人な気がする。

「文子は何でもお見通しか…
独身最後に昇進したって、ちょっと驚かそうと思ったんだけどな…」
俺は苦笑いで答えた。
「ふふっ…
でも、これで祐司の独身も卒業ね」

俺達は来月結婚する。



end


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