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千分の一話噺

第379章 パリの占い師


エッフェル塔。
パリにそびえ立つフランスのシンボルタワー。
近くを流れるセーヌ河周辺と共に世界遺産にも登録されている。

彼の店は、そんなパリの中心部からはちょっと離れた裏路地の一角にある古いアパートの一室だった。

部屋に入ると仄かだが爽やかな香りが漂う。
「これはミントだよ
ミントには人をリラックスさせる効果があるんだ」
私は、彼の占い師としての腕を見込んだ来た訳ではない。
正直、彼の占い師としての才能は平凡である。
が、彼には占い以上のある特技があった。

「…それでは始めます」

彼は私に手をかざし、目を閉じる様に言った。
彼が私には分からない言葉で囁き始めると、私は深い眠りに落ちて行った。



エッフェル塔の展望室、私は外を眺めていた。
セーヌ河は今日も穏やかに流れている。
パパとママと小さな私、家族でパリ旅行をしていた。
そんな楽しいはずの旅行中に事件は起きた。



「今日はここまでにしよう」
彼の声で目を覚ました。
彼の催眠術で、消えていた昔の記憶を呼び起こすのも五回目になる。
私の記憶は、過去の凄惨なテロ事件以前が消えてしまっているだ。
昔のパリはテロの都と揶揄されるくらい多かった。
思い起こさない方が良いのかも知れない。
しかし、大事な家族の記憶まで消えたままなのは、どうしても我慢ならなかった。

まだ頭がぼおっとしているが、ミントの爽やかな香りが心地好かった。
「あなた、催眠治療師の方が儲かるんじゃない?」
「お祖母ちゃん、僕はれっきとした占い師だよ
催眠術は趣味でやってるの」
私が意見すると、彼は頭を掻きながら困った様子で答えた。


end



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