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千分の一話噺

第369章 片想い


「あ~ん、ラット様~♪」
親友の真紀がスマホを見ながらニマニマしていた。
「真紀~、あんた何やってんの?」
真紀の頭をワシャワシャとしてやった。
「ちょっとぉ~!
今、ラット様の画像見てるんだからぁ!」
真紀は振り返って頬を膨らませた。

「ラット様って、あのピエロ仮面のラットキッドでしょ?
あんなコソ泥のどこが良いのよ?」
私には全く理解出来なかった。
「彼って神出鬼没で大胆不敵じゃない
それに仮面で隠してるけど、絶対イケメンだと思うの!」
イケメンは完全に真紀の妄想だ。
「…はいはい」
ハート型になった真紀の瞳を見たら何も言えなかった。

「こないだも予告通りに現れたんだって!
私も見たかったなぁ~」
もうラットキッドの話題ばかりだ。
「でも、いつも何盗ってるのかよく分からないみたいじゃない?」
「自分だけの宝物を盗んでるのよ
拘りが有ってカッコイイでしょ」
恋は盲目と言うけど、今の真紀は正にこれだ。
何を言ってもキラキラした瞳で良い様にしか解釈しない。
「…はぁ、まぁ真紀がどんなに想っていても相手は泥棒だからね
程々にしときな」
「あ~ん、ラット様~♪
私のハートを盗んで♪」

駄目だ、こりゃ!


end
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