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千分の一話噺

第37章 俺の夏休み


近くを流れる小川から心地好い風が流れてくると、縁側の軒先に吊した風鈴が、涼しげな音色を奏でる。
庭に目をやると、数日前に蒔いた向日葵が太陽に向かってスクスクと伸びている。

俺は日陰で欠伸をしながら、ぼけーっとしていた。
普段は二食昼寝付きで良い待遇だと思う。
だがしかし、これからは夏休み。
こんな平和な日々とはしばらくお別れだな。
そろそろ奴がやってくる。


家の中が騒がしくなりだした。
どうやら奴がやってきた様だ。
バタバタと走る足音が近いてくる。

「ポチ!元気だった!?」
俺の元へ来ると、頭や腹を撫でてくる。
これがまた気持ち良いんだ。
俺は尻尾を目一杯振って答える。

「今夜の夏祭りも、一緒に行こうな」
こいつが来ると俺は忙しいが楽しい。
いつもはおじいちゃんと散歩だから余りはしゃぐ訳にはいかないが、こいつとならはしゃぎ捲れる。
夏祭りには屋台でご馳走にもありつける。
花火の音にはちょっとビビるけど…。

ただ、蛍狩りだけは苦手だ。
近くの小川にふわりとと飛び交うたくさんの小さな光り達。
せせらぎに川面を渡る涼しい風に、気持ち良くうたた寝してる俺の鼻先に止まりやがるんだ。
人間には幻想的に見えるんだろうけど、俺には関係ないね。


数日後には、奴は都会に帰るけど今年も目一杯遊んでやるぜ。


end
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