• テキストサイズ

千分の一話噺

第363章 俺とあいつ22・初詣帰り


俺達は久しぶりにこたつでのんびりとしていた。
「やっぱり正月休みはこれだよね」
「無職のお前が何言ってんだ」
初詣へ行った帰り、余りの寒さにこいつの家に寄った。

お茶を啜りながら、ミカンに手を伸ばした。
「…何で雪だるまって、この形なんだろうね?」
こいつは俺にミカンを二つ重ねて見せた。
「いやいや、海外の雪だるまはこうだ」
俺はミカンを三つ重ねた。
「けど、向こうは雪だるまって言わないじゃん」
「まぁ…だるまは日本だよな…」
「でしょ
でもでも、だるまって顔だけだし、こんな形じゃないじゃん」
たしかにこいつの言うことも分かる。

「でもよぉ、顔だけの雪だるまってしまらねぇと思わねぇか?」
ミカンを剥きながら呟く。
「そっかぁ~
…それもそうだね
やっぱり身体もないと変だよね」
俺が皮を剥くと半分取られる。
「食べるんなら自分で剥け!」
「あ~ん、してあげようかと思ってね」
ミカンを一房、俺の目の前に差し出した。
「ふっ、ふざけてんじゃねぇ!」
(あっぶねぇ…
一瞬、口を開けそうになっちまった)
本当にこいつは油断も隙もあったもんじゃない。

「あっ、見て見て!雪♪」
「寒い訳だ」
窓の外に白い物がちらつき出した。
「積もったら雪だるま作ろっ!」
「…積もらねぇよ」
令和になってもガキのままだな、こいつは。

でもそこが…。



end
/ 1580ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp